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【イベントレポート】京都商店街創生フォーラムが開催されました(前編)
2018/11/09

はじめに

2018年9月5日、商店街創生センターが主催する、商店街関係者、行政職員および若手事業者、学生などを対象にした「京都商店街創生フォーラム 2018」(以下、商店街創生フォーラム)が開催されました。

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時代の流れとともに「商店街」を取り巻く環境が厳しくなるなかで、商店街同士や学生、若手事業者、行政などと連携しながら、官民一体となって商店街を盛り上げていくことが求められています。

それは、京都府内にある約300の商店街も例外ではありません。

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元気な商店街づくりへ向けて、まずは先進事例を知り、人のつながりをつくることで活性化の手法を探り、これからの商店街のあり方を共に考える機会がもてればと、本フォーラムが開催される運びとなりました。

開催に先立ち、冒頭では主催者による開会の挨拶や商店街創生センターの紹介がありました。

▲商店街創生センター長宇津克美氏より開会の挨拶。

▲京都府商工労働観光部長鈴木氏より開会の挨拶。

▲濱田事務局長より商店街創生センターの取組についての説明。

当日の会場には京都府内外から約150名が集まり、それぞれが【商店街 × 〇〇(自分資源やキーワード)】を考えながら、商店街活性化へ向けた先進事例を知り、互いに意見を交換するなど、活気あふれる場となりました。

 

■第1部・基調講演

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第1部は、宮崎県日南市の「油津(あぶらつ)商店街」再生事業に取り組んだ、木藤亮太氏の基調講演「宮崎県日南市・油津商店街の再生からみる地方創生の新しいかたち」から始まりました。

木藤亮太氏 / 株式会社ホーホゥ代表取締役、元日南市テナントミックスサポートマネージャー
福岡県出身。宮崎県日南市が実施した全国公募により333人の中から選ばれ、2013年より “猫さえ歩かない” と言われた油津商店街の再生事業に取り組み、約4年で25を超える新規出店、企業誘致等を実現。「2016年はばたく商店街30選(経済産業省)」を受賞。現在は、自らが育った福岡県那珂川町の「事業間連携専門官」に着任、株式会社ホーホゥ代表取締役を務める。

多くのメディアに取り上げられ、商店街活性化の先進事例として紹介されている「油津商店街」。木藤さんは一体、どのような取り組みを行ったのでしょうか。

人口約52,000人の宮崎県日南市。かつては、地場産業である「飫肥杉(おびすぎ)」の生産やマグロ漁が盛んで、油津商店街は駅と港の中間にある活気あふれる通りだったそう。ところが、林業や漁業の衰退とともに港が廃れ、かつて宮崎県南で1番の盛り上がりを見せていたはずの油津商店街もだんだんと人通りが少なくなり、次第にシャッターが降りていきました。

そんなシャッター商店街に、「テナントミックスサポートマネージャー」として4年間で20店舗を誘致することが日南市から木藤さんに課せられたミッション。地縁もないなかで、木藤さんは29もの新しい空間をオープンさせます。

 

地域住民の応援が連鎖のように広がり、まちを変えていく

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「もともとは、油津商店街の未来を考えるところからのスタートでしたが、全国各地の地方が抱えている『若者の流出』を防ぐために、働く場の創出を視野に入れた取り組みを行いました。人口減少が進み、かつてのように溢れる人通りへ向けて商品を売る時代ではなくなっているなかで、今の時代だからこそできる人や興味の集め方を考えながら、商店街はどのように変わることができるか・変わるべきかを議論しました。(木藤さん)」

古い建物や空き地を利活用しながら油津商店街の町並みを変えていくことで、商店街が “日南市民の新たなお出かけの場” として変化していきます。その4年間で再生した背景には5つのキーワードがありました。

 

1.覚悟:覚悟を決めると応援する人・お金が集まる
大事なのは、熱い想いとリスクを背負ってでもやる覚悟。
それが地域側に伝われば、協力者は次第に増えていく。

木藤さんははじめに、10年ほど空き店舗になっていた喫茶店をリノベーションし、2014年4月に「ABURATSU COFFEE」をオープン。同時期に「株式会社油津応援団」を設立しています。

テナントミックスマネージャーとして提示されていた委託料が月額90万円だったこともあり、日南市の人々から木藤さんは、期待や疑念の意を込めて「90万円の人」と呼ばれていたそう。しかし、会社を設立し、銀行融資を受けて自己資金を投入しながら事業を行うことで、次第に木藤さんの「覚悟」が地域の方々に伝わっていきました。

空き家のリノベーションやまちづくり会社の設立など、日南市で地域を盛り上げるおもしろい動きが生まれ始めていることが東京にも伝わり、2名の若者がUターン。それを皮切りに、商店街にはだんだんと若い世代が集まってくるようになりました。

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▲基調講演の内容がグラフィックレコーディングで可視化されていきます。

 

2.現象:意図・デザインした場から生まれるものがある
商店街との関わり方に幅をもたせることで新しい「市民参加」のカタチをつくる。

2015年11月には、商店街の真ん中に多世代交流モールを10店同時にオープン。

なかでも、スタジオ、スクール、フリースペースからなる「油津Yotten」のレンタル料は1時間あたり約1,000~1,500円と借りやすく、中庭を挟んで向かいにある「あぶらつ食堂」と連動した同窓会や子ども会などの食事会の場として、あるいはダンスレッスンなどの習い事やヨガなどのサークル活動場所として、幅広く活用されるようになりました。

子ども達が習い事をしに商店街を訪れるようになると、送り迎えをするお母さん達も毎週のように商店街に集まり、周辺にある飲食店を訪れるようになります。“お喋りしながら「ABURATSU COFFEE」でコーヒーを1杯飲む” というような日頃の行動が、地域内の消費活動につながる循環が生まれていきます。

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木藤さんは、「通常の店舗誘致ではなく『起業家支援』という側面からテナントミックスマネジメントを行うことがポイントだ」と語ります。

“地元でなにかやってみたい” 若者の発掘、新規出店へ向けた伴走支援、開業後のフォローを一貫して行うことで、商店街内で若者やUIターン者が独立しやすい環境をつくり、油津商店街を未来につなげるための新しいテナントを誘致することに成功しました。

 

3.活用:ないものねだりからあるものいかしへ
ないものねだりをするのではなく、あるものを見つけて磨き上げることが大事。
日南市には2つのチャンスがあった。

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ひとつめのチャンスは、港に寄港するクルーズ船。

年間を通して30隻ほど中国からのクルーズ船が油津に立ち寄り、多いときは一度に4,000人ほどの観光客と乗組員が地域を訪れます。彼ら・彼女らに商店街を訪れてもらえるように、中国語のマップ作成やシャトルバスの運行、通訳ボランティアを配置するなど、訪日外国人を新たなお客さんとして受け入れられるよう、体制を整えていきます。

ふたつめのチャンスは、プロ野球チームの「広島東洋カープ」。選手達は50年以上に渡って春季、秋季のキャンプ地として日南市を訪れており、滞在1ヶ月の間に50,000人のファンが足を運びます。

球場から商店街周辺のランチマップの作成や、キャンプ地でしか見ることのできないグッズを展示した「油津カープ館」、球場と商店街をつなぐ「カープ一本道」、JR油津駅が「カープ油津駅」として生まれ変わるなど、カープファンの回遊が生まれるしかけを整え、2017年2月にはリーグ優勝の影響で1.5倍の集客につながりました。

 

4.自走:必要にかられれば自ら動き出す
カフェ、働く場、保育所、そしてゲストハウス。
いま、このまちに “本当に必要な” 空間が「油津商店街」に集まってきた。

多くの地方都市が抱えている人口減少問題。日南市も例外ではなく、就職や進学を機に、年間7~800人の若者がまちを出ていきます。そういった若い世代が魅力を感じられるような「地域づくり」が課題となっていました。

まずは、“若者が働きたくなる環境をつくろう” と、ブティック跡地を活用し東京のIT企業のオフィスを2016年4月に誘致。サテライトオフィスとして、全体で100人ほどの日南市民が新たに採用されています。

商店街に新しく働く場ができたことで、そこで働く女性から「保育園をつくってほしい!」という声が集まり、2017年3月 油津商店街に小規模の認可保育園が誕生しました。

そのほかにも、ビジネスコンテストで「商店街にゲストハウスを作ってはどうか」と提案した大学生のアイデアをサポートしながら、飲食店だった物件をゲストハウスにリノベーション。2017年2月にオープンし、カープのキャンプ時にはほぼ満室になったそう。

これらは、みんなが見慣れたこれまでの “通りにお店が並ぶ商店街” のようではないけれど、日南市民が必要としている空間だったのです。こうして、日南市に新たな「商店街」の風景が描かれていきます。

 

5.理由:何のためのまちづくりなのか
全ては「油津商店街」を、次の世代により良いかたちでバトンタッチしていくために。

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木藤さん達の取り組みにより、通り沿いや周辺地域に様々な変化が起きてきた油津商店街。

「4年間ずっとやりながら考えてきたけれど、私1人だったらここまでできていなかったと思います。自分達を応援してくれる人が増えるにつれて、『油津商店街』は少しずつ生まれ変わっていくことができました。そういった変化が、地域の子ども達に伝わっていることが何よりも嬉しいですね。これからも、地元で頑張ろうとしている若者を地域で応援していきたいです。(木藤さん)」

 

“再生した” とも “再生したわけではない” とも表現される油津商店街。

商店街再生とは、「かつての良かった時代へ戻ることではなく、社会情勢やライフスタイルの変化を前提に、先を見据えて『ゼロベース』でデザインすること。『若者』や『地域』の新しいチャレンジが生まれる場所であり続けることが、商店街の価値を高めることにつながっていく」と、木藤さんは最後にそう締めくくりました。

 

< 会場からのQ&A >

Q1. 覚悟を決めただけでは「人財」が集まらないのではないでしょうか?

木藤さん: おっしゃる通りで、はじめは人海戦術で地道に活動を広げていきました。地域の方から「株式会社油津応援団」の取り組みに対する見方や捉えかたが変わると、応援してくれたり情報を提供してくれたりするようになりました。

Q2. 地産地消に関する取り組みはされていますか?

木藤さん: 油津商店街に新しくできたお店が長く続くためには、市民の消費に関する意識が変わることが大事だと思っています。それも自分たちにできる「地産地消」ではないでしょうか。ほかにも、地元農家さんと一緒にマルシェを開催したり、新店舗の内装に地元産の飫肥杉(おびすぎ)を使っています。

Q3. この4年間のターニングポイントはいつだと思いますか?

木藤さん:明確にこの時だ! というわけではないのですが、街並みの変化が実際に見えてくると反対意見が少なくなりました。ただ「新しいものをつくればいい!」というわけではないですが、ソフトだけではなく、ハードの変化も大事だと思います。

 

>> 後編では、「京都で頑張る商店街からみる活性化のヒント」をテーマにしたトークセッションや、商店街と連携した事業展開を考えている若者・事業者による1分間プレゼンテーションについてご紹介していきます。

ライター
Anna Namikawa

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