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【イベントレポート】京都商店創生フォーラム2020(前編)
2020/05/15

かつては人の集まる中心地として、地域の経済を支えてきた商店街。少子高齢化や生活スタイルの変化などから、少しずつ衰退する商店街も増えてきています。

 こうした状況の中、京都府内各地の商店街を応援し、地域コミュニティの中核として未来に残していきたいとの思いから、2015年10月に商店街創生センターが設立、以来4年間にわたり、北は京丹後市から南は笠置町まで、様々な商店街が熱心に活性化事業に取り組んでこられました。商店街創生センターは「商店街活性化若手プロジェクト※」のメンバーの協力を得て、そうした商店街をサポートしています。

 商店街活性化やまちづくりに関わっている人材・団体等によるプロジェクトチーム。このメンバーと商店街とをつなぎ、若者や外部の新鮮なアイデアやネットワークを商店街の活性化に活かしています。

京都府各地の商店街に関心がある方々が集結

2019年度、商店街創生センターでは、京都府内にある商店街や事業者のみなさん、大学生や府民のみなさんが集まり、連携や交流を通じた商店街の活性化を目指して、これからの商店街のあり方を考えるイベント「商店街ネットワークサロン」を、京都府内の各地で全4回開催してきました。

2020222日に開催した「京都商店街創生フォーラム2020(以下、フォーラム)」は、その集大成となるもので、「商店街ネットワークサロン」への参加者をはじめ、商店街の取組を通じて出会った商店主のみなさんや地域づくりに関わる方々、若手起業家や大学生など120名を超える参加者が京都経済センターに集まり、事例共有や交流を通じて商店街の未来をともに考えました。

フォーラムは、第一部:ゲストトーク、第二部:活動プレゼンテーション、第三部:ネットワーキングの三部構成。

第一部に先駆けて、主催者からの挨拶がありました。

商店街創生センター 宇津克美センター長の挨拶

フォーラムを「商店街や地域への熱い思いを語り合う場にしていきたい」と鈴木商工労働観光部部長

 

第一部:名古屋・円頓寺商店街『商店街でのウチとソトとの関係性』

第一部のゲストトークの始まりです。名古屋・円頓寺(えんどうじ)商店街から市原正人(いちはらまさと)さんと藤田まや(ふじたまや)さんをお招きし、お二人の活動内容とその後の展開等について伺いました。

向かって左 市原さん、右 藤田さん

市原正人氏/市原建築設計事務所主宰、株式会社ナゴノダナバンク代表取締役

1961年名古屋生まれ。20年前より円頓寺商店街を中心に那古野地区のまちづくりに関わり、2009年空き店舗対策を行うナゴノダナバンクを発足する。現在は、他地域のまちづくりを行い、那古野エリアとの地域間連携に取り組む。また、文化財の管理及び民間活用、地域産業・食の振興の取り組みも始める。

藤田まや氏/株式会社ナゴノダナバンク代表取締役

大正2年創業、円頓寺商店街の「化粧品のフジタ」に生まれる。愛知淑徳大学都市環境デザインコースで実習助手をしていた頃、四間道・円頓寺界隈のまちづくりを行う「那古野下町衆(なごやしたまちしゅう)」に発足時より参加。同団体内の空き家対策チーム「ナゴノダナバンク」のリーダーで建築家の市原や齋藤らとともに、2018年にはチームを法人化。その後、宅建業開業、高知県主催イベントの運営、他地域のまちづくりにも取り組む。

 それぞれの関わり

二人が活動するのは、名古屋駅から徒歩15分ほどの那古野(なごの)と呼ばれるエリアにある円頓寺商店街。名古屋で一番古いといわれている商店街。大須商店街、大曽根商店街と並ぶ三大商店街として知られてきました。しかし、近年は、ほとんどのことが名古屋駅周辺で事足りてしまい、わざわざ商店街へ足を運んでもらうには、「商店街へ行く理由」を創り出すことが必要でした。

 そんな円頓寺商店街に、市原さんが関わるようになったのは、本業である設計事務所の仕事がきっかけでした。

「1988年に、古民家改修の仕事で訪れたことが始まりです。近所に住む、元芸者のおばあちゃんと知り合って。一緒にご飯を食べたり飲みに行ったりして、まちのことを教わるうちに、面白い場所だなと思ったんです(市原さん)」

「商店街はほとんど人がいないのに、一軒一軒のお店にはなぜか常にお客さんがいる。そのコントラストが面白くて友人にも教えてあげたいな、いろんな人に伝えたいな」と思いました(市原さん)

誰に頼まれるわけでもなく、市原さんは商店街の七夕まつりで飾り付けをお手伝いしたり、空き店舗を活用して1日ギャラリーを開催したりと、商店街との関わりを深めていきました。

ちょうどその頃、藤田さんは高校生だったそう。生家は商店街内で大正2年創業の「化粧品のフジタ」。商店街で生まれ育った彼女は、市原さんの動きをどのように見ていたのでしょうか?

「私が知っているお店の人やお客さんとも雰囲気が違うし、何者だろう。日中にフラフラ歩いているし、怪しいし(笑)。まちに異物が入ってきたと思いましたね(藤田さん)」

ウチとソトのいい関係の始まり

商店街は、かっては店主さんたちがまちづくりの主役となり、ウチだけで運営されてきました。しかし、商店街がゆるやかな衰退をたどる中、「ウチの人だけでは再びまちを盛り上げることはできない」という声のもと、2007年、商店街のウチとソト(商店街以外の人)の両方の人たちが関わる地域主体のまちづくり団体「那古野下町衆(なごやしたまちしゅう)」が立ち上がりました。

メンバーは、建築家、デザイナーなどの専門的なアドバイスができるソトの人と、まちの歴史や風習、人間関係を知るウチの人を合わせた総勢20名。活動内容は、イベント、町並みルールつくり、空き家・空き店舗を3本の柱としました。

飲み歩きやアンケート、七夕祭りの飾りづくりなど様々な活動を進める中で、空き家・空き店舗の活用を進めるためにより迅速な動きができるよう、2009年に市原さんたちのグループが独立。「ナゴノダナバンク」として動き出しました。

まちの再生のキーワードとなったのが、”ウチにとっては当たり前、ソトにとっては新鮮”なこと。そういう視点で改めてまちを見直した結果、ウチに残るものとして、「老舗」「名物料理と店主」「歴史的街並み」「祭り」の4つのキーワードが浮かび上がってきました。

 

「100年以上続いている老舗店、地元の人が口を揃えて紹介してくれる名店、1日に1回は店主ご夫婦のケンカが始まるのをお客さんが楽しみに待つ飲食店、歴史的な街並み、祭り……こうしたことに人は惹きつけられ、商店街を訪れていました(市原さん)」

緩やかな衰退には、緩やかな再興を

2020年2月までにナゴノダナバンクは、円頓寺商店街に30店舗を誘致してきました。その際、大切にしたのは、年2〜3店舗の誘致ペースを守ることです。

「円頓寺商店街は、ゆるやかに衰退してきましたが、生き残っているお店もあります。理由を聞くと、彼らは時代に合わせてサービスや商品を変えてきている。革新こそが継続なんです。だから、変化に対応する術をもつ彼らであれば衰退してきた時間と同じ時間をかけて、ゆるやかに再興していけば、古いお店もそのまま新しい街に残ってくれるんじゃないかと考えました(市原さん)」

しかし、もともと空き店舗を活用したいと考えていない人に、改修や店舗誘致を持ちかけても、初めのうちはほとんどが門前払い。そこで市原さんたちは、商店街でお店を始めたい人を先に探し出し、お店の図面を引き、収支計画を立て家賃の推定までした、具体的で説得力ある事業計画書を準備したうえで、空き店舗の大家さんに提案し、賃貸の交渉を進めていきました。

その甲斐あって、ナゴノダナバンクの取組に賛同してくれる大家さんが少しずつ増加。市原さんが開いたギャラリーショップや、その隣にオープンしたスペインバルの店を皮切りに、女子大生起業カフェ、ブラジル音楽専門店、劇場など、あえてニッチなジャンルやユニークな店主に焦点を当てた、個性が光る店舗の誘致が実現。こうして、商店街とその周辺の歴史的な街並みの風情を残しつつ、“ここにしかない”魅力を打ち出すことで、円頓寺商店街の魅力を高めています。

新しい視点と愛着の掛け算が、魅力あるまちをつくる

ソトの人として商店街の再興に関わる市原さんがウチの人といい関係を築くために、もう一つ、大切にしていることがあると言います。それが、ウチの人たちの思いを大切にすることです。

「歴史的な街並みを残す円頓寺商店街には、県の文化財に指定されている建物や、城下町の豪商の土蔵、下町の風情が残る長屋など那古野らしい建物がたくさん残っています。ウチの人たちが持つ建物それぞれのストーリーを大切にし繋げて行かなければならないと思うんです。出来るだけ地域の人が誇りに思うお店を誘致し、地域の人が納得できるように心がけています(市原さん)」

クラウドファンディングなども活用し、昔の建物のデザインを残しつつ使うなど、建物の歴史を引き継ぎながら新たなストーリーを創り出すリノベーションをすることで地域の人の今と昔の記憶がつながり、魅力ある再生ができる、と語る市原さん。

そんな市原さんの思いを汲み取りながら、ウチの人である藤田さんは、ソトの人が関わる魅力をこう語ります。

「ソトの人は、ウチの人が思いつかなかった発想をどんどん出してくれます。難しいんじゃないかと思うことも、色々な人に相談して巻き込んで実現していくんです。ソトの人の専門性やアイデアと、ウチの人のネットワークがうまくかみ合うことで、円頓寺商店街は、ゆるやかな再興に向かっている実感があります(藤田さん)」

2015年に行ったアーケードの改修も、ソトのいろいろな人の意見を聞いて採り入れたことで、おしゃれで採算性も考えたアーケードになったそう。愛知まちなみ建築賞も受賞しました。

他にも、フランス好きの店主がたまたま揃ったことから、「パリ祭」を発案。フランスの車のディーラーを呼んで商店街に展示スペースを設けたり、外部のフレンチ料理有名店にも出店を呼びかけるなど、「すでにあるウチのお祭りに勝つくらいのものを作りたいとの気概で1年半くらいプランを練って仕掛けました(市原さん)」

「こんな破天荒なことができるのは、ソトの人だから。ウチの人にはない発想でアイデアを出してくれる分、私は商店街の人への説明や協力を取り付けることに奔走しました。(藤田さん)」

藤田さんは、商店街のすべての店を回って、パリ祭の期間中は店を開けて、各店舗でパリ祭限定商品を出してもらえるよう説得。また、パリ祭のチラシには商店街マップを載せるなど、「商店街のイベント」とすることにこだわりました。

パリ祭はソトの人のノリから始まったイベントですが、今ではすっかり商店街を代表するイベントに成長。スタートから2年後の2015年には、パリで一番古い商店街、パッサージュ・デ・パノラマと姉妹提携を結び、名実ともに円頓寺商店街とパリが繋がりました。

円頓寺商店街が、今のように再興できたのは、こうした「祭り」があることのほかに、アーケードがあったことも大きいと藤田さんは言います。

「アーケードがあったおかげで、寂れていた頃も、商店街としての意識を持ち続けることができた、ということはあると思います。(藤田さん)」

さらなるソトとの繋がり、地域間連携イベント「商店街オープン」

このようにゆるやかに再興する円頓寺商店街。その経験をもとに、ナゴノダナバンクは2018年から名古屋市とともに「商店街オープン」をスタートしました。

「商店街オープン」は、空き店舗を魅力あるカタチでオープンすることを目指し、事業プランをつくるワークショップ。商店街のソトとさらにつながろうと、地域間連携をしながら商店街の活性化に取り組んでいます。

 

◇商店街ネットワークサロン◇

【イベントレポート】商店街ネットワークサロンvol.1_自分ごとからはじめる商店街での一歩

【イベントレポート】商店街ネットワークサロンvol.2_空き家活用とエリアの活性化

【イベントレポート】商店街ネットワークサロンvol.3_メディアやイベント運営による地域のブランドづくり

【イベントレポート】商店街ネットワークサロンvol.4_デザインや地図活用による商店街の可能性

ライター
北川由依

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