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【第26号】若者と地域をむすぶ老舗昆布屋店主と考えた、これからの商店街のカタチ。|中書島繁栄会
2018/04/13

 

伏見のまちと中書島繁栄会。

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京都市伏見区は、戦国時代に豊臣秀吉の桃山城下町として栄え、江戸時代末期には坂本龍馬が襲撃された「寺田屋事件」が起こるなど、日本の歴史にその名を刻んできた地域です。

京都と大阪間を船で行き来しながら酒や米を運び、物流の拠点、また、交通の要所として「伏見」という独自のブランドを築いてきました。

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京阪電車・中書島駅の駅前に広がる「中書島繁栄会」。

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通りには、昭和初期のレトロな雰囲気が今なお残っています。

本日は、中書島繁栄会に新たにお店を移し、若者と共に地域を盛り上げる 北淸昆布5代目・北澤雅彦(きたざわ まさひこ)さんの元を尋ねました。

 

今でも思い出す、幼少期の原体験。

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「なやまちセンター」へ移転した頃のお写真。(写真提供:北澤さん)

 

北淸昆布」は、1912(明治45)年に丹波橋で創業。昆布の加工製造・卸し業を営んできました。1935年、現代表のおじいさんの代で納屋町商店街にある「なやまちセンター」へ移転。北澤さんが物心ついた頃、同商店街はものすごく賑わっていたそう。

特にお正月が近づくと通路はたくさんの人で溢れかえり、年末に向けて仕込んだ昆布は天井まで積み上げられ、文字通り “飛ぶように” 売れていきました。「昆布ちょうだい!」というお客さんの声に、昆布を投げるくらいでないと追いつかないほど破茶滅茶な状況だったのだとか。そんな当時の様子が原体験として心に残っていると北澤さんはおっしゃいます。

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▲たくさんの人で賑わう「なやまちセンター」。(写真提供:北澤さん)

 

子どもの頃から後継ぎになることが決まっていた北澤さん。

バブル期にさしかかり、世の中がだんだんと豊かになっていくなかで、家業をすんなり継ごうとは思えなかったそう。「行きたかったら大学でもなんでも行ったらいい。思いっきり遊んでこい!」と両親に言われ、デザインの専門学校に進学します。そこで奥さまと出会い結婚。学校を辞めて就職し、当初は「もう京都には帰らない!」と告げ、大阪のデザイン事務所で働いたのだとか。

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▲「おこぶ 北淸」の台所に立つ、奥さまのやえさん。

 

その後、実家の手伝いをしたり、自分で事業を立ち上げたりとさまざまな事に取り組み、2011年に家族の要望もあり、家業を継ぐことを決意します。

 

人が集まることで生まれる、新たな「まち」のおもしろさ。

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家業を継ぐと同時に、中書島に新店舗を構えた北澤さん。

ちょうどその頃から、伏見を盛り上げているメンバーと関わりはじめたことがきっかけで、まちのルーツや歴史に興味をもちはじめます。写真や映像に携わる多様なメンバーと一緒に伏見のまちを歩いてみると、改めておもしろい地域であることに気づいたのだとか。

「まち歩きを通して、地域にあるいろんな要素に光を当てることの大切さを知り、光の当て方ひとつでまちのイメージが一変することを感じました。そうやって新たな角度から見つけた地域のおもしろさは、外から人を集める力にもなるんです。自分の意図しないところに様々な視点が加わることで、地元の捉え方がグッと変わりましたね」(北澤さん)

北澤さんが、これまで以上に深く伏見のまちに関わるようになったのは「伏見まるごと博物館」(2012〜2016年)の取り組みに参加してからのこと。伏見で暮らす幅広い年代の人に話を聞いたり、ヒアリングを元に冊子をつくったり、展示会やイベントの企画など伏見の地域文化を発掘し、伝える活動をしていました。「まちの人に話を聞くことで伏見の輪郭をつくっていけるところが、この取り組みのおもしろさでした」と北澤さんは語ります。

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▲一緒にイベントを企画する若手メンバー。(写真提供:北澤さん)

 

「なやまちセンター」で営業する傍ら、中書島の新店舗ではじめた「Standing,Drinking 月一」というイベント。もともとは、昆布のおいしさを伝えるために、まずは気軽に味わってもらいたい! という気持ちではじめた企画なのだそう。ちょうど、試行錯誤していた頃に「立ち飲み」が注目されはじめ、昆布とお酒の相性がいいことを発見します。

思いついたら即、行動に移していく北澤さん。酒屋をしていた友人に声をかけ、すぐに企画が立ち上がりました。そうやって商店街に別の目的で人が集まる機会をつくっていくと、外から「関わりたい!」という若者が現れ、その若者がまた次の若者を呼んでくるという流れが生まれました。そういった取り組みをSNSで拡散すると、これまで出会えなかったようなおもしろい若者たちもお店にやってくるように。

昨年末、建物の老朽化に伴い80年余りお店を構えていた「なやまちセンター」の組合が解散。移転先についてはしばらく悩んだそうですが、最終的に北澤さんが生まれ育った中書島に戻り、同時に中書島繁栄会へ加盟します。

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▲向かって右が、北澤さんが家業を継いだ際に構えた店舗。

 

そして、これまでの北澤さんの人生に大きく関係してきた「昆布・伏見・デザイン・音楽」をキーワードに “人が集まる場” ができたらおもしろいのではないかと考え、2017年3月におこぶ・おだし・おばんざいの店「おこぶ 北淸」を新たにオープン。出汁をもっと身近に感じてもらえたらと、定食やおばんざいが楽しめるカフェ&バーとして営業しています。

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▲「Standing,Drinking 月一」で出会った若者が開いたイベント。(写真提供:北澤さん)

 

そのほかにも、音楽祭やライブを開催したり、映画をつくるワークショップを行って近所の銭湯で上映会をしたりと、仲間たちと共に様々な取り組みを行なってきた北澤さん。精力的に動いた分だけ、人と出会い、つながり、次の企画が生まれていきます。

なかでも、年末に開催される「中書島紅白歌合戦」は大いに盛り上がるイベントなのだとか。ドレスコードは “昭和歌謡を彷彿とさせる衣装” ということで、参加者はみんな気合いを入れて準備をします。

商店街に店舗を構えている方々にとって、自分のお店を繁栄させることはもちろん大事なのですが、北澤さんはそれだけでなく「商店街」や「伏見」に賑わいをもたらす方法を考えてきました。そういった視点や、そこでできた人のつながりは、結果として自店の繁栄にもつながっていきます。

▲中書島紅白歌合戦のポスター。

 

「地域での取り組みと同時に、自店もまた中書島の魅力になれるような店舗づくりを心がけてきました。新たに人が混ざる場(お店)をつくったことで、『中書島駅にはじめて降りました!』『良いまちですね!』というお客さんの声が聞けるのが嬉しいです。大阪や兵庫などの近畿圏だけでなく、東京や九州、 北海道そして海外からもはるばる足を運んでくれるんですよ。そういう場になってきたからこそ、これまでやってきた『点』の取り組みを『線』に、そして『面』にしていきたいですね」(北澤さん)

“地元の方がまだ気づいていないまちの魅力は、外から来た人が教えてくれる” そんなきっかけになるようなお店にしていきたいと、お話は続きます。

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最後に、これからの「商店街」のあり方についてお話を伺いました。

商店街組織はこれからどんどん “新しい形” になっていくと思います。同時に、そうじゃないと生き残れないとも思っていて。一度バラバラになってみて、再び “やりたい” という仲間が集まってくるような組織のイメージですかね。全国的にも、商店街組織のあり方を見直していかないといけない過渡期ではないでしょうか。

今後も、新しく地域を訪れた方に『一緒に中書島を楽しみたい!』と興味をもってもらえるような、『ここで出店したい!』と思ってもらえるような店舗づくり・商店街づくりをしていきたいです。それには空き店舗を貸す側の準備も必要ですし、新たに足を運んでもらえるきっかけもつくり続けないといけません。なかなか一筋縄ではいきませんが、まずは自分から中書島ならではの魅力、まちの色を発信していけたらと思います」(北澤さん)

 

北澤さんにとって 商店街のおもしろさは、子どもの頃に体験した “人々が押し合いへし合いやっていたごちゃ混ぜの状況” なのだとか。その場所に集まる人の賑わいが、お店の賑わい、そして、まちの賑わいへとつながっていくことを誰よりも肌で感じておられるのかもしれません。

若者に対しても友達のように接する北澤さんだからこそ、その人柄に惹かれて、北澤さんの元を訪れにたくさんの人がやって来るのだと感じました。これまで地域のおもしろさを際立たせる役目を果たしてきた 北澤さんご自身が「昆布」のように、中書島のまちに深みをもたせる存在なのだと思います。

お話を通して、今の時代に地域に「商店街」があり続けることの意味、これからもあり続けていくためのヒントを得たインタビューでした。北澤さん、本日はありがとうございました!

 

取材後は、「おこぶ 北淸」にて、「おこぶの出汁茶漬け定食(税込:1000円)」をいただきました。

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はじめに出てきたのは、こちらの飲むお出汁。ひと口飲むと、素材の香りとうま味が口の中に広がります。

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お次は、とろろおにぎりの出汁茶漬け。ミョウガや三つ葉、とり味噌、ぶぶあられを乗せて、最後にお出汁をかけていただきます。昆布締めの野菜はシャキシャキしており、噛めば噛むほどうま味が増していきますよ。

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最後は、焼きおにぎりの出汁茶漬け。香ばしい風味とお出汁の優しさが身体中に染み渡っていきました。みなさんもぜひ、「おこぶ北淸」でお出汁本来の味を体験してみてくださいね!

 

おこぶ 北淸/北淸昆布

※今後のイベント情報などは、Facebookページにてご確認ください!

ライター
Anna Namikawa
地域
京都市

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