長岡京市にある阪急長岡天神駅を降り、数分歩いて行くと、セブン商店会という字が目に飛び込んできます。
「セブン」と聞くと、特写番組のヒーローの名やラッキーセブンと思わず口走ったり、それぞれが何かしら反応してしまうほど、かなり名前にインパクトがある商店会です。
そんな商店会について、長岡京セブン商店会長であり、美容サロン「ミントハウス」を創業した林定信さん、家業の不動産を継いだ「小森株式会社」代表の小森保人さん、ヨガインストラクターでありながら、その傍らでカフェを創業した岩野しずえさんの3人にお話を聞いてきました。
長岡京セブン商店会ってどんなところ?
南北の通りが『市道の7号線』であったという理由でセブンと付いたという説、商店が『7の形』をしているからという説、『7人の事業主』が集まって商店会ができた説等々、長岡セブン商店会(以下セブン商店会)の名前の由来は諸説あります。それについてみんなが話し出したら、ゆうに2時間は費やしてしまうとか。
そんなセブン商店会は、ここ数年で加盟店が約20店舗減少という問題に直面していました。その要因は、「商店主の高齢化」「新規加盟店を募集していなかった」ことにあるようです。
しかし、2016年の夏からのたった4ヵ月間で12店舗も増えたのです。どうしてなのでしょうか?
「商店会のことを知らない」からこそできる?!
2015年の夏のこと。林さんの店に当時の会長が現れ、商店会への加盟を勧められました。30年以上も商店街内で営業しているのにも関わらず未加盟だったこともあり、地域に貢献したいという思いも込め、林さんは、その時商店会への加盟を決めたと言います。
2016年春、商店会会長の代替わりの時期となりましたが、理事会では、会長職を引き継ぐ人選に難航していました。そのような中、林さんは手を挙げました。
「その時は、『商店会を新しく開拓したい』という前会長の思いを受け継ぐためには、過去の商店会のことをまったく知らない自分の方が、できるのかもしれないと思ったんです。経験がないことはマイナス面ではなく、逆にそれはプラス面。知らないからこそできることがある。だからこそ一からやれるのではないかと」(林さん)
そうして手探りの状態から会長を始めることになった林さん。前職である銀行員のときには、さまざまな業種の人と関わることが多く、その経験を活かし、いろいろな人を巻き込みつつうまく繋げていくことが、自分ができる会長の役目だと思ったそうです。しかし、「自分一人だけでは、理想まで届くことはできなかった。岩野さんや小森さんたちがそれぞれできる事をしてくれたからこそ、商店街が盛り上がってきた」と、これまでを振り返ります。
協力し合える仲間の存在は大きい。林さんの言葉からは、そんな印象を受けました。
未来予想図委員会の誕生
実は、この委員会の前身は、「活性化委員会」でした。それは、「そもそも『活性化』ってなんだろう」を真剣に考えようとはじまりました。そして、活性化するには一つの方向性(コンセプト)が必要というだということになり、それを決めるために、商店会内外の人を交えて意見交換会、「未来予想図委員会」をしようということになりました。
どうせするなら、いろんな人に来てもらいたいとの思いからFacebookで会の開催を告知。その結果、「参加したい」という声が集まり、誰でも参加できるオープンな会として「未来予想図委員会」の幕が上がりました。
8月1日の午後1時から始まった「第1回未来予想図委員会」。当日は、商店会関係者、地域の人、行政関係者、議員の他、まちづくりに興味のある方、商店街創生センター派遣の商店街活性化若手プロジェクトメンバーの方々など、総勢40名という予想を上回る数の参加者があり、司会役の小森さんもとても緊張したそうです。
「40人という大人数のディスカッションで、よう熱っぽく盛り上がったなぁ。いろんな意見が出て、ぼくも冷や汗をかきながらの綱渡り状態の進行でした」(小森さん)
参加者全員で、セブン商店会について、”どうしたい?なにがあったらいいか?”についてまずフリートーキング。
その中からは、安心・安全、花、緑、マップ、緩いコミュニケーションなどのキーワードが出てきました。
「セブン商店会が強みとして発信できるもの、こんなことをすればいいんじゃないということを聞き、セブンにもまだ潜在的な資源があることがわかった。長岡京市もまだ人口は少し増えているので、その人たちを商店会に来てもらうように考えていきたいな。」(小森さん)
未来予想図委員会で出てきた意見は、商店会関係者にとっては新鮮で、日頃自分たちが普通と思っているモノやコトに価値があることを気づく機会となりました。
それから月1回のペースで「未来予想図委員会」は開催され、その意見参考に理事会で話し合いをするというサイクルが何度か繰り返され、会員の動きもいきいきと活発になっていったとか。
てんてこ舞いのハロウィンイベント
こうして盛り上がった未来予想図委員会から、急遽、ハロウィンのイベントの実施が決まりました。もともとは商店会の有志がやっていたことを商店会としてやれないか?という声が会員からあがってのこと。
決定から開催までの時間も1ヶ月もなく、当初参加者は近隣保育園児20人ほどの予定が開始直前には、次々に他の保育園も、となって、なんと200人まで急増!うれしい反面、ちゃんと運営できるのだろうか?費用は参加店舗の実費負担なので、店舗への負担も増え断られるのではないか?林さんたちは心配しました。
ところが、意外や意外、蓋を開けてみると、商店主の皆さんは「いいですよ」「できることはやる」と快諾してくれたそうです。こうして多くの方から支えられたハロウィンイベントは無事成功。
普段人通りがない商店街が、子どもたちの笑顔でいっぱいの景色になり、それを見られたことがとても嬉しかった、と林さんは感動で声を震わせながらイベントの様子を語ってくれました。
「今回のイベントに関しては、イベントの対象が子どもだったことが大きかったです。『地域の子どもたちに喜んでもらえるんやったら、地域の子どもたちのために参加します』って言う人がほとんどでした」(小森さん)
このイベントを通じて、商店会内の横のつながりが強まっただけでなく、地域の人々との関係も深まった。今後はハロウィンだけでなく、他のイベントも定期的に地域ぐるみでできるようになれば、商店会としても輪が広がっていくと林さんたちは考えます。
大型店ができて、お店を辞めていく人も多い中で、商店街の強みは「地域とのコミュニケーション」だと林さんは言います。
「おはよう」「こんにちは」といった些細な言葉さえ交わす機会が少なくなってしまった現代。このような、人のゆるやかな繫がりが、商店街の良さ。”商店街だからこそできる、ゆるっと繋がる心地よいくらし”を楽しんでほしい。岩野さんも、その関わり方について自身の経験を交えながら語ってくれました。
「いろんな人を受け入れるなか、行きかう人同士でのちょっとした挨拶があり、「なんとなく顔見知り」という関係性が増えるくらいでよくて。がっつりではなくてもいいんです。薄くても繋がれるというのが一番なんですよね」(岩野さん)
セブンの快進撃は続く?!
ハロウィンイベントによって、今まで切れていたコミュニケーションが復活したとの声もあり、今後、人づくりの場としてイベントを活用していくとのこと。年末には、新たなイベントを実施予定です。これまで以上に多くの人を巻き込み、賑わう様子が見られることでしょう。でも、あくまでもイベントは、セブン商店会の活性化のまだ取りかかりのところ。みんなが自由に意見を言い合える「未来予想図委員会」のような取り組みを続けつつ、これからのセブン商店会がどのように変化していくのか、楽しみです。
林さん、小森さん、岩野さん、ありがとうございました!