京都府北部に位置する福知山市には、およそ79,000人が暮らしています。自然豊かなこのまちは、四方が山に囲まれており、若狭湾に通ずる一級河川の由良川が流れています。また、市街地には今でも城下町の風情が残っています。
「福知山・新町商店街」ってどんなところ?
年々、店主の高齢化が進んでいることから、全国の商店街が抱えているような後継者不足が課題となっている一方で、2016年10月から毎月第4日曜日に開催されている「福知山ワンダーマーケット」(以下、ワンダーマーケット)といった新しい取り組みが行われています。
また、2016年4月には福知山公立大学が開校し、学生と地域の交流も少しずつ生まれています。
本日は、そんな新町商店街でカフェ&ギャラリー「まぃまぃ堂」を営む横川知子(よこがわ ともこ)さんと、新町商店街が好きな福知山公立大学2年生の辻捺乃(つじ なつの)さんにお話を伺いました。
まずはできることから!自宅を改装して生まれたカフェ「まぃまぃ堂」
まぃまぃ堂店主の横川さん(以下、知子さん)は、福知山出身。東京の大学に4年間通い、大阪で会社員として5年間勤めた後、地元へUターンされました。商店街にカフェをオープンしてから8年が経ちます。
-なぜ新町商店街でお店を始めようと思われたんですか?
知子さん:ずっと自分でお店をすることは決めていたんです。お茶が飲めて、お菓子が食べられる場所がこの辺りにもあったらいいなと思っていて。以前は福知山のショッピングセンターのギャラリー喫茶でアルバイトをしていたのですが、ショッピングセンターが閉店してしまったのでこれを機に新たに場所を探すことにしました。
古いものが好きで、古い公民館や銀行の跡、元銭湯など跡地を中心に北近畿一円で物件を探していたのですが、なかなか決めきれなくて。まずはできるところからと思い、新町商店街にある自宅を改装してお店を始めました。
-ご実家が商店街にあったのですね。内装工事などはご自身でされたのですか?
知子さん:内装はカフェ部分は工務店さんと、自分達でできるところはお友達と一緒に。ギャラリー部分は近所のおじさんとお友達で改装しました。こういうのが地元ならではの良さですね。
元々は呉服屋さん、そして以前は洋服屋さんをしていた名残もあってか、店内の壁を少しずつ剥がしていくと木の壁が出てきたので、あるものはそのまま使うことにしました。私自身もインテリアを考えることが好きなので、これまで東京や大阪、海外で見てきて「いいな!」と思ったものを少しずつ要素として落とし込んでいます。
-お店を始められた当時の新町商店街の様子はどうでしたか?
知子さん:その頃も人通りは今とあまり変わりません。
最盛期は私も知らないのですが、私が幼かった頃は、時計屋さんが3軒、本屋さんとおもちゃ屋さんが2軒ずつ、他にも履物屋さんや洋服店など様々な店舗があり賑わっていました。ですが、私が大きくなるにつれて徐々に店舗数や人通りも減ってしまいました。
商店街内には賃貸の物件もありますが、店舗兼自宅の方がほとんどで、今もお住まいになっています。誰かに貸してややこしくなるならそのままで…という方も少なくはありません。
ただ、近くには大学ができましたし、福知山には転勤で来る方もたくさんおられるんです。そういった人たちが地域に関われるきっかけの商店街になれたらいいなと思います。彼ら・彼女らの背中を押してあげられないだろうかと思っていて。
-シャッターが閉まっていても1階部分は空き店舗なのでもったいないなとは思うことは多々ありますが、なかなか難しいところですよね。そんな中、知子さんはお隣のシャッターも開けちゃったのだとか。
知子さん:ここもどんどん「シャッター商店街」と言われるようになってきて、みんなどうしようかと口にはするけれど、何も取り組まないところに歯がゆさを感じていました。生まれ育ったこの場所はすごく良いところだし、身近にあった商店街の魅力にも改めて気づけるようになってきて。
一軒カフェができれば周にもお店が増えていくのかな? と思っていたんですけど、なかなかそうはならなかったので、思い切ってお隣の空き家をカフェとつなげてギャラリーをつくることにしてみました(笑)
私は、新町商店街がきっかけで「商店街」が好きになりました!
2016年4月から福知山公立大学の地域経営学部に通う福井県出身の辻捺乃さん(以下、捺乃ちゃん)。新町商店街を訪れてから「商店街」が好きになったのだそう。
-捺乃ちゃんが新町商店街を訪れたきっかけは何ですか?
捺乃ちゃん:入学して間もない頃に開催されたtomos(※1)の企画で、商店街のまち歩きをした時に新町商店街を知りました。レトロな看板を見て「すてきだな!」と思ったんです。私の地元にも商店街はあったのですが、「商店街」を好きになったきっかけはこの場所です。
あまりにも好きだと言いすぎて「辻さん、そんなに商店街に行きたいなら行こうよ!」と大学の先生が一緒に来てくれたこともあります(笑) また「まぃまぃ堂さんっていうカフェがあるよ!」と教えてくれる先生もいました。
-なるほどなるほど(笑)
捺乃ちゃん:通っていくうちに愛着が湧くようになってきて、「ここはわたしの場所!」なんて思うようになりました(笑) 商店街に来ると何だか落ち着くし、勉強やバイトで忙しかった〜、疲れた〜、と思ったらふと「商店街に行こう!」と思うんですよね。
初めて訪れた時の “この場所いいなぁ〜” を求めて散歩しにきます。その時間帯に空いてるお店はないんですけどね…。今は夜ごはんを食べられるところを探しています。
-新町商店街とはどんな風に関わり始めたのですか?
捺乃ちゃん:まち歩きをしてからずっと商店街に興味はあるけれど、どこから関わっていいかわからなかったんです。そんな時、ワンダーマーケットの当日スタッフをやってみないかと先生が勧めてくれて。やっと商店街に関わることができました!
(※1)tomos…京都の北部地域の中高生に向けて「新しい発見や異なる考え方に出会い、自ら未来(将来)を主体的に描け、行動できる人を増やす」ことを目的としている任意団体。「京都で学ぶ大学生」や「京都北部地域で活躍している素敵な大人」との出会い・交流する機会をつくります。(HP参照)
新町商店街の新しい取り組み「福知山ワンダーマーケット」って?
-そういえば、お2人が出会った「福知山ワンダーマーケット」はどのようにして始まったんですか?
知子さん:ストックバンク(※2)の担当者が呼びかけて始まった事業です。趣旨に賛同した10人程が集まって実行委員会として主催しています。これまで空き家を見るだけではなかなか新規出店につながらなかったので、実行委員のメンバーで様々な事例を見ながら試行錯誤しました。
そこで、まずはワンダーマーケットで将来自分のお店を持つことに興味がある人に訪れてもらって、可能性を感じてもらうことから始めようと思いました。こういった生活が福知山にあると知ってもらえるいいきっかけにもなりますしね。
-実際に開催してみてどうでしたか?
知子さん:ワンダーマーケットをきっかけに福知山や新町商店街に新しく人が訪れたり、地元の人が楽しんでくれたりと、とても嬉しかったです。捺乃ちゃん達が当日ボランティアスタッフをしてくれたのですが、大学生はみんなテキパキしていて爽やかで、とっても助かりました!
(※2)ストックバンク…ストックバンクは、福知山中心市街地(まちなか)の空き家や空き店舗を所有する方と、住まいやお店として利用する方々とのマッチングの仕組みです。(HP参照)
そんなお2人が考えている「新町商店街のこれから」とは?
-まず、知子さんにとって新町商店街とはどのような場所でしょうか?
知子さん:いいところ!すごく住みやすいし、朝ドラのような人情味があります。
周りにもっとお店があれば、これから更に楽しくなりそう。“毎日が旅のように過ごせる場所” になったらいいなと思っています。シェアハウスやゲストハウスなんかがあったらいいですね〜。
- “毎日が旅のように” 、ステキな表現ですね。今後、新町商店街がどんな風になったらいいなと思いますか?
知子さん:「楽しいまち」ってどれだけ知っている人がいるか、挨拶ができるかだと思うんです。若い人たちも含めていろんな人が交流することや、これまでいた人達や地域のお年寄り、新しく来た人みんなが楽しめるまちになっていけばいいなと思います。そこから新たなものが生まれていくのかもしれませんしね。
こうやって、捺乃ちゃんのような大学生まで来てくれるようになったのは、とても素敵な変化だと思います。
-捺乃ちゃんの「これから商店街でやってみたいこと」を聞かせてください!
捺乃ちゃん:商店街と大学でコラボしてイベントや企画ができたらいいなと思っています。といっても今すぐにイメージはできないのですが、光を使ったおしゃれなものや、まち歩きをしながら写真を撮るイベントなんかをやってみたいです。
実は大学の別の取り組みで、地元の高校生の行きつけのカフェを商店街につくるのはどうか? という企画もあるんです。これらを通して商店街の情報発信をやってみたいなと思っています!
-知子さん、捺乃ちゃん、本日はありがとうございました。
“地元をもっと楽しくしたい” という一心で新町商店街を耕し続けてきた知子さんと、大学進学と共に福知山にやってきて、商店街が好きになった捺乃ちゃん。
本日ご紹介したように商店街に足を運ぶきっかけは人それぞれですが、商店街と周辺地域で暮らす方々がゆるやかに交流していくことで、新たに何かが始まっていくのかもしれません。シャッターが少しずつ開いていく新町商店街のこれからの動きが楽しみですね。