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【第15号】イベントレポート「地域に変化を生む、組織の作り方」|ゲスト:荒木宏之さん
2017/04/10

商店街HACKプロジェクトでは、商店街やまちに興味がある方を対象に「情報発信」「事業承継」「新規出店」「組織構築」などのテーマで年4回のイベントを企画しています。 

第4回目は、2017年2月21日に京都リサーチパーク町家スタジオで開催。

「組織構築」をテーマに兵庫県伊丹市より伊丹商店連合会会長であり、クロスロードカフェ店主の荒木宏之さんにお話を伺いました。

hiroyuki araki

荒木 宏之(あらき ひろゆき)さん/クロスロードカフェ店主/伊丹商店連合会会長

1955年兵庫県伊丹市生まれ。1980年より化粧品店、ダスキンフランチャイズを経営。阪神淡路大震災を経てまちづくりに関わり「伊丹まちづくり会議」を市民たちと共に立ち上げる。2002年にクロスロードカフェをオープン。2009年より伊丹郷町(ごうちょう)商業会会長を8年間務める。その間、「伊丹まちなかバル」「伊丹郷町屋台村」「鳴く虫と郷町」「伊丹のお店で子ども職業体験 はたら子」「ITAMI GREENJAM」「イタミ朝マルシェ」など “持続継続” をキーワードにユニークでオンリーワンな街中イベントを開催している。昨年、伊丹郷町商業会会長を退き、全国的にもあまり例を見ない若手中心の体制に導く。

メンバーの数だけ、イベントも多種多様!「伊丹郷町商業会」

hack event 04

一緒にご登壇いただいた、伊丹で「ベランダ長屋」を運営する鹿嶋孝子さん(左)

兵庫県伊丹市には、世代や肩書きを超えたメンバー150人以上で構成している「伊丹郷町商業会」という組織があります。

伊丹郷町商業会は地域事業者一体となって、歴史・文化都市としての伊丹ブランドの確立と中心市街地の活性化に取り組んでおります。(「いたみん」ポータルサイトより引用)

商業会のメンバーが中心となって開催しているイベントは本当に多種多様。

例えば、虫の鳴き声を通して秋を感じてもらおうと始まった「鳴く虫と郷町」、100軒ほどの店舗が参加し、全体で1,800万円ほどの売上にもなる「伊丹まちなかバル」、伊丹の飲食店が年に2回、三軒寺前広場に集う大人の祭り「伊丹郷町屋台村」、毎月日曜日にやっている「イタミ朝マルシェ」、昆陽池(こやいけ)公園で開催される無料野外音楽フェス「ITAMI GREENJAM」など。

2001年に商業会を結成してから、何よりも自分たちが楽しい! と思える企画を心がけておられます。

これらのイベントは一時的なものではなく日常の集客にもつながっており、まちの活性化にも一役買っているのだそう。広域的に連携できる商業会があったからこそ、こういうことができるのではないかと荒木さん。

合言葉は「持続継続」。これまで開催してきたイベントで、打ち上げ花火的なものは1つもないのだとか。そんな風に年間を通してイベントを開催している郷町商業会の理事メンバーの平均年齢はなんと35歳! さらに、最年少は26歳だというので驚きです。

このように若いメンバーで商業会を構成するようになったきっかけは一体何だったのでしょうか。

自分たちの力でまちづくりを進めたい!震災後に誕生した「クロスロードカフェ」

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あまりにも元気に動きすぎて、 “ブラックリスト” にのったこともあると笑いながら話す荒木さん。

市民が「まちづくり」にもっと関わっていけないかと、荒木さんが動き始めたきっかけは1996年に発生した「阪神淡路大震災」でした。

この震災で大きな被害を受けた伊丹市。当時40歳だった荒木さんは翌年、まちの復興のために若い力を集結させ、伊丹商工会議所青年部を誕生させました。市民参加・協働が叫ばれていた時代だったからこそ、行政や学者、コンサル主導ではなく自分達の力でまちづくりを進めていくことを決意。

そして、2001年に「伊丹まちづくり会議」を発足。2002年8月には、まちづくり会議の活動拠点として「クロスロードカフェ」をオープンさせました。

道が交わり、世代や国籍を超えて人々が交わる場所。その名の通り、交差点に店を構えるクロスロードカフェは、様々な人が行き交う場となっています。また、オープン当初から月替わりでギャラリー展示が行われており、これまで200回以上の展示会が開催されました。これも外からの人の流れをつくる工夫なのだとか。

伊丹まちづくり会議が始まるとともに「伊丹郷町商業会」が誕生。枠組みからはみ出だして連携していきましょうと、商店街同士の関係性づくりや若い世代が街へ還元できる循環づくりなど、どんどん若い世代へ受け継いでいく組織構築をされました。

こういった取り組みを年々続けていくと、アンテナを持っている人が自然と集まり、何かが始まっていくので、活動拠点としてクロスロードカフェの存在は大きい、と荒木さん。始めた当初は大変なこともありましたが、ここまで胸を張って言えるのは、人やまちとの関係性を14年かけて積み重ねてきたからこそ。

そして2009年に “今しかない” という直感もあり、荒木さんは伊丹郷町商業会の会長に就任。

「アンタららしく、やったらええ。」若い世代が盛り上げる、伊丹のまち。

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伊丹の街中にある広場を使ってバザーやストリート落語などを開催していた荒木さん。

ある日、若手メンバーの1人が「広場って僕らが使ってもいいの?」と聞いてきたのだそう。この時、絶対に若手のみんなと広場を使った企画をしよう! と決心。荒木さんはこういった若手の動きに対してしっかりと実施に向けたサポートをしています。最近は若手メンバーが育ってきて、「え、資料できてへんの?」と荒木さんが怒られることもあるのだとか。

成長するメンバーの様子と伊丹の10年先を考え、「このままではあかんな」と荒木さんは8年間務めた会長を退任されました。新たに30代の店主が会長に就任した今、 “伊丹は今後さらに面白くなっていく” と確信を持っておられます。

また、現在荒木さんは、伊丹の街中にある7,8つの商店街を束ねる商店街連合会長も務めておられます。そちらに関しても、“自分がずっといても仕方がない” と5年後には若手に代わってもらう予定なのだそう。

伊丹の特徴は、70,80代の方々がちゃんと若手を支えていること。こうやって世代別に役割分担が自然とできているのはすごいことだと荒木さん。

みんなの力を集結させて、伊丹をもっとおもしろく!

ITAMI GREENJAMはもともと「伊丹商店連合会青年部」を立ち上げることを目的に始まりました。

伊丹中心部以外にも賑わいを、と補助金からスタートし昆陽池の芝生広場を舞台に、若者の力を集結させて、みんなが楽しめるイベントづくりをされています。前回は10,000人もの人が集まったそうで、今年は 9月17,18日に開催を予定しています。

“青年部のメンバーはいろんな立場の人がいるから面白く、雑多な人を巻き込んでいる。そういうことをやっていかないとまちは変わらない” と荒木さん。現在、彼らが中心となって広場以外の商店街も活性化し、まちに元気な笑顔が集うような仕掛けを考えています。最近は20歳の若者たちが顔を出すようになり、フェスのお手伝いもしてくれるのだそう。

また、若手主導の新しい動きとして昨年、商店街にあるビルの2階部分をリノベーションし、カフェやクリエイターズラウンジ、古着屋などが一緒になっている「Greenjam Building」が誕生しました。若手メンバーによるこれからの動きも楽しみですね。

ひとりひとりの思いを重ねて1つの形をつくることが、活動に繋がっていきます。大事なのは、「言い続ける、持続してやり続ける」こと。伊丹のまちづくりに関わり始めた当初から僕は「今、伊丹おもしろいで!」と言い続けてきました。その結果が今だと思っています。

荒木さんは、最後にそう締めくくられました。

参加者からのご質問

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参加者:こういった組織構築の動きに対して反対意見を言う人は今でもおられますか?

荒木:今はもういないですね。

参加者:郷町商業会で、7,8つの商店街を束ねるのは大変だったのではないでしょうか?

荒木:ずっと中心市街地の連合会をつくろうと思っていました。

まずは、古くから商売をされてきた方、老舗の店舗に個別に話をしに行きました。やはり商業会では、老舗のお店がどれだけ協力してくれるかが大事です。

もちろん大変なこともありましたが、たまたま30年前にあったセンター商店街が潰れていた箇所にクロスロードカフェができたこともあり、商店主の皆さんも気にかけてくれ、こういった動きが広がりやすかったのかもしれません。

参加者:JRが便利になり、伊丹にイオンモールができ、そちらに人が流れて行く中で、阪急とJRの間にある商店街の意識は変わりましたか?

荒木:JRの複線化により、乗降客の数は確かに変わりました。そして2002年にイオンモール、さらにもう1つ昆陽イオンができたことで商売への影響は当然あったし、非常にしんどい状況に変わりはないです。

サンロード商店街では年々店舗が減り、マンションが2棟建ちました。伊丹の人口は増えていますが5年先、10年先にどうなっているかはわかりません。今から考えなければいけないところです。

参加者:理事会の平均年齢が若いのはみんなが世代交代をしたからかですか?

荒木:理事会には、家業を継いだ人が3名、起業した人が7名います。これからもっと創業支援を整備していかなければと思っています。

参加者:空き店舗は増えていますか?

荒木:この1年で減りましたが、それでも多いです。ただ、バルの影響で飲食店を出店しようと伊丹に来る人がいます。現状、同業者の食い合いも起こっているので、まちを統括する人が必要になってきます。

参加者:商店主だけでイベントを企画すると疲弊すると聞いていますが、その辺はどうお考えですか?

荒木:それは間違いなくそうです。イベント運営をしていくなかで、外部組織や事務局機能を担える人材が絶対必要です。 伊丹の場合 、(株)都市開発が事務局として商店主と一緒に活動しているのがとても大きいです。 伊丹まちなかバルが持続継続して成功しているのは (株)都市開発の存在がかかせません。

-荒木さん、本日はありがとうございました。

荒木さんが若者に求めるのは “一緒に楽しむ、面白がってくれること” だけ。そういった動きを無理やり組織化するのではなく、少しずつ前のめりに関わってくれる人を増やすことで、新たな風が入るように組織の循環をつくっておられます。

また、荒木さんのように「この場所、あんたらの好きなように使ったらいいよ!」と言ってくれる大人達がいることは商店街や地域にとっても、若い世代にとっても心強く、そういったところから新たなことにチャレンジしたくなる空気感が生まれていくのだと感じました。

イベント概要はFacebookページにて。

ライター
Anna Namikawa
地域
兵庫

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