2024年度、商店街創生センターでは、商店街への訪問や意見交換会を通して、商店街の未来を参加者どうしで考える「商店街これかラボ」や、商店街の課題に対し新しいアクションプランの創出を目指す「商店街ジャンクション」、商店街や子育て支援団体関係者などが、子育て支援についてできることを考え実践につなげていく「子育て×商店街フォーラム」などの取組を行ってきました。
そして1年間の集大成となる「京都商店街創生フォーラム2025(以下、フォーラム)」を2月24日に開催しました。
2018年度から始まったフォーラムは、今回で7回目。京都経済センター3階のオープンイノベーションカフェ「KOIN」を会場に、およそ120名が集いました。
商店街関係者商店街に関わる事業者の方、大学生など様々な方が大集合。立場を超えて、「商店街」というキーワードでつながり、学び合う時間となりました。
まずは、主催者である京都府の西脇隆俊知事と京都商店連盟の上田照雄会長から開会の挨拶。「地域の「個性」「可能性」が活きる商店街の姿とは?」をテーマに、フォーラムの幕が開けました。
西脇知事「コロナ禍を経て、身近な商店街の役割が見直されたところ。このフォーラムで、商店街の魅力や可能性を再認識いただければありがたい。」
上田会長「商店街はものを売る場所というだけではなく、子ども達や地域の方々と触れ合える場所。」
商店街創生センター田中事務局長 フォーラムの趣旨やセンターの事業説明。
第1部:オープニングトークタイム
最初のプログラムは、加藤寛之さんによるオープニングトーク。
加藤さんは、大阪阿倍野区でベーカリーカフェやレストラン等を経営しながら、枚方市をはじめ全国で定期的な青空市を開催するなど、様々な方法でまちの価値を高める活動を続けられています。
「各地域で活動している中で、まちを活気づけるためには、地元の人が愛してやまないお店がまちの中にあることが重要だということに気づきました。商店街も同じで、商店街内に地域の人にとって魅力的なお店があることが重要です」と話します。
加藤寛之氏 (都市計画家・株式会社サルトコラボレイティヴ代表)
「コロナ禍が空けて、インバウンドを重視するところも多いですが、まず地元の人に愛されるお店が出てこないと、まちに人は増えません。孔子の言葉に『近き者説び、遠き者来る』という言葉がありますが、まさにその通りだと思っています。」
「『ローカルの「よき商い」』=『地域の経済に貢献する、お客様から評価の高い店』を増やしていくことが、商店街の活性化につながります」
「ただ大多数の意見を聞くだけでは、活性化にはつながりません。最も重要なことは、身銭をきって、まちを面白がってポジティブに行動する少数の方々を応援することです。そうした少数派を応援し、少数派の意見への共感の和を広げていく。そうして少しずつ、多くの人が素敵だと思える未来をつくっていくことができるんです。」
次に、加藤さん自身の経験談も語ってくださいました。加藤さんが暮らす大阪阿倍野区では、「すぐ近くの天王寺駅に大規模な商業施設ができた影響で、どんどんお店がなくなっていった」「自分の好きなお店も移転しはじめ、ご近所を素敵な場所に変えない限り、自分の暮らしが楽しいものでなくなると思い、『Buy Local』という活動を始めた」そうです。
『Buy Local』は、年に一回、5月29日に行われる青空市です。「地域の人々に日常を楽しんでもらうため、遠方からも人が来やすい休日ではなく、あえて平日に行うようになった」と言います。
「目新しい、大きなものができると、地域の消費者の目はそちらに向きます。そうすると、その地域で商売をしたい、と思う人がいなくなります。『Buy Local』で、ご近所の素敵なお店を地域の人々に伝えることで、地域の人々の消費行動を変えれば、まちで何かをしたい人が出てくるのでは、と思いました。」
少数の、地域で頑張っている人々を応援したことで、大阪阿倍野区には2013年以降、70店舗以上の新規出店があり、加藤さんの周辺地域は魅力ある素敵な場所になっていきました。
少数の頑張っている人々の意見に耳を傾け、その活動を応援する。加藤さんの考えや実体験には、商店街のこれからを考えるヒントがたくさん散りばめられていました。
第2部:活動プレゼンテーションタイム
第2部では、京都府内外で商店街に関わる8組のプレゼンテーターが2つの会場に分かれ、取組事例の発表を行いました。
登壇者の皆さんは、次の通りです。
開場① 司会:タナカ ユウヤさん((株)ツナグム)
プレゼンタイトル | |
1 |
舞鶴の若者の想いを変える。商店街での挑戦 |
2 |
こども達がひとつにするコレカラ商店街 |
3 |
四条大宮まちづくり協議会で見えたcivic prideと place promotion |
4 |
笑顔が寄付に変わる!商店街を通りたくなる仕掛け大作戦! |
会場② 司会:藤田始史さん
((株)地域計画建築研究所)
プレゼンタイトル | |
1 |
商店街における小商いを支援する複合施設計画 |
2 |
本好きな人が繋がり合うシェア型書店の可能性 |
3 |
みんなで創るコミュニティat深草商店街 |
4 |
地域商業/観光へ集客する決済アプリ「京都EcoPay」 |
ここでは、2組の事例を取り上げます。
最初に紹介するのは、南丹市の園部町・宮町商栄会で会長を務める樋口浩之さん。同じく園部町の若松町商店街で駄菓子屋を営む一谷さんと、近隣の商店街で連携してイベントを行った事例について紹介いただきました。
樋口さん:宮町商栄会の付近には他に4つの商店街があります。10年以上前から、計5つの商店街を1つにできないか、という動きがありましたが、なかなかうまくいっていませんでした。今回、5つの商店街から、若い人を集め、夏祭り・ハロウィンイベントを実施しました。子ども達に喜んでもらいたいという一心で、各商店街が協力してイベントに取り組むことができ、一つになるきっかけになりました。
樋口さんは今年度の商店街ジャンクションにも参加され、5商店街を巻き込んだ新たな企画づくりを進めておられます。今後もますます賑やかになる園部町に注目です!
次に紹介するのは、一般社団法人One Smile Foundationの代表理事である辻早紀さん。「笑顔が寄付に変わる」という取組を行っています。
辻さん:街なかには防犯カメラがたくさん設置されています。この防犯カメラが、単に犯罪抑止のためだけではなく、人の幸福や盛り上がりを検知し、誰かにおすそ分けできる社会になればいいなという思いからこの事業を始めました。具体的には、カメラで笑顔を読み取り、1笑顔につき1円の寄付が発生する仕組みです。
以前大型ホームセンターに、笑顔を検知するタブレットを設置し、笑顔になってくれたらクーポンをプレゼント、とお知らせした時には、万引きの被害額が減ったり、お店をもう一度利用したい、という人が多くなったと言います。この取り組みを通じて、商店街に人を呼び込み、盛り上げていくことができるのでは、と考えています。
第3部:ダイアログタイム
いよいよ最後のプログラムであるダイアログタイム。フォーラム全体を振り返りつつ、グループに分かれ商店街のこれからを参加者自身が自分ごととして考えていきます。
司会進行は、株式会社ツナグム取締役のタナカユウヤさん。
今回のフォーラムには、京都府内や近隣府県はもとより、遠くは東京や鎌倉からも参加いただきました。第3部では周囲の人と和気あいあいと笑顔での会話も弾みました。
「商店街」をテーマに様々な方々が集まった京都商店街創生フォーラム2025。加藤さんのお話や事例発表を踏まえ商店街のこれからについて語り合ったことは、今回参加された方々が次の一歩を踏み出す後押しとなるのではないでしょうか。