飾らない風景、変わらない人情味の「古川町商店街」
1964年に設立した古川町商店街。
地下鉄「東山駅」の2番出口を左に曲がるとすぐに、古川町商店街の入口があります。岡崎・祇園エリアの中間に位置し、周辺には白川が流れ、川沿いには京都華頂大学があります。
古川町商店街はかつて、 “東の錦” もしくは “京の東の台所” と呼ばれていました。
小さなアーケード内には、手づくりのザルや網を売る金物屋さん、包丁研ぎの職人さん、手造りにとことんこだわるお惣菜屋さんなど、昔ながらの個性豊かな三十数軒の商店が並びます。そして、「こんにちは」「おおきに」とあたたかみのあるやりとりが毎日繰り返されています。(古川町商店街HPより)
実際にアーケード内を歩いてみると、周辺で暮らす地域の方が買い物にやってくる鶏肉屋さんや魚屋さん、若い世代が訪れるクラフトビールのお店や京わたがし専門店、国内外の人々が宿泊する町家のゲストハウス、さらにはVRで忍者体験ができる店舗など、幅広いお店の数々。
現在も生活の一部を担っているお店が多く、ふと訪れたくなるような人情味のある “やさしい日常” があふれています。本日は、そんな古川町商店街のおへそ(真ん中)に位置する、商店街の情報発信拠点「古川趣蔵」を訪ねました。
古川町商店街に事務所を構える、CMO京都府認証第1号の「白川まちづくり会社」とは
2017年7月に発足した(株)白川まちづくり会社 は、地域の社会問題を解決する「ソーシャルカンパニー」。古川趣蔵内に事務所を構え、商店街や地域住民、民間企業が協力しながら会社の運営に携わっています。また、地元や企業が一体となって出資をしており、地元出資比率はおよそ70%にのぼるそう。
この度、白川まちづくり会社は 京都地域商業再生機構(CMO ※1) 第1号に認証され、9月に認証書交付式が行われました。
(※1)京都地域商業再生機構(CMO)とは
2017年7月に創設された京都府の新たな認証制度。空き家問題や商店街の活性化など、地域が抱える社会的問題を解決し、持続可能な新しいコミュニティ再生の仕組を構築するため、持続的な地域商業の活性化に取り組む活動を行う社会的企業を京都府地域商業再生機構(CMO)として認証している。
認証基準は、
- 商店街を核に、自治会、地域住民、支援企業等と連携した組織であること。
- 商店街をはじめ地域商業活性化のほか、地域ブランドの構築や、高齢化問題など地域コミュニティの課題解決等に取り組む組織であること。
- 観光客の消費を取り込むなど、安定的に組織の運営に必要な収益をあげられる組織であること。
- 事業によって得られた利益を地域に再投資する組織であること。
という4点が挙げられる。
白川まちづくり会社が中心となって、商店街でのイベントやワークショップの企画運営、大学や地域との連携事業の実施、新店舗の誘致や空き家・空き店舗活用の相談会などを開催しています。これらの取り組みを通して、古川町商店街が “持続的に地域コミュニティの核になれる” ような施策を行なっています。
そんな、白川まちづくり会社で代表取締役副社長を務める、鈴木淳之(すずき あつし)さんにお話を伺いました。
-本日は、どうぞよろしくお願いします。まずはじめに「白川まちづくり会社」はどのようなメンバーで構成されているのですか?
鈴木さん(以下、敬称略):会社に関わる主なメンバーは、商店街の理事長、会員、英語やスペイン語が話せるスタッフ、そしてわたしです。会社設立にあたって、商店街の会員のみで何かをすることやボランティア活動だけではなく、民間企業の活力を活かして地域を活性化しよう! という方針で動いています。
-なるほど。この度、京都府初の「CMO」に認証されたとのことですが、日頃の取り組みを通して心がけておられることはありますか?
鈴木:商店街が核となって地域全体が活性化する、“持続的な地域コミュニティづくり” を意識しています。
-先ほどから古川趣蔵には、地域の方々や大学生が出入りされていますね。
鈴木:周辺地域にお住まいの方や出資企業の方、古川町商店街を卒論研究の題材にしている学生達、近所のシェアハウスで生活する大学院生など幅広い世代が、古川趣蔵で開催している「ともいき食堂」(※記事下部参照)という企画に集まって来てくれます。こういった、自然に交流が生まれる場があるというのは地域にとって大事なことかもしれません。
-入った瞬間から、笑顔があふれるすてきな空間だと感じていました。てっきり、鈴木さんははじめから商店街に関わっておられると思っていたのですが、違うのですね。
鈴木:はい。2014年10月に古川町商店街に関わりはじめたので、今年で3年になります。今は信じられないかもしれませんが、来た当初は現在のような雰囲気ではなく、商店街のみなさんの反応も正直なところ、あまり良くなかったんですよ(笑)
-そうだったんですね。そんな風に感じられなかったので驚きです。
鈴木:少しずつイベント企画などを重ねていくうちに、“この場所でも何かを企画すれば人が来る” ということをわたしも体感でき、商店街のみなさんも積極的に関わってくれるようになりました。
-古川町商店街はイベントを開催するのに立地もいいですよね。
鈴木:そうですね。とにかく場所がいいんです。なので、最初は “何もしないのはもったいないな” と感じていました。岡崎や祇園エリアに挟まれ、近くには白川が流れているし、大学もありますので。
それに加えて古川町商店街には、昔ながらの金物屋さんや刃物屋さん、惣菜屋さんなどがあり、“京都の町衆の文化が残った場所” となっています。ここにいると、そういった歴史ある商店街ならではの良さを改めて感じますね。
-地域の良さや商店街の良さがひしひしと感じられます。
鈴木:関わって来た取り組みにも一定の成果を感じてもらえ、2015年3月に商店街の理事会メンバーに選んでいただきました。その後も様々な企画を重ね、現在はみんなで会社をつくってこのような情報発信拠点を持ち、商店街内だけでなく 地域の人や学生にもオープンな場所にすることができています。
-お話ありがとうございました。白川まちづくり会社や古川趣蔵が今日に到るまでのプロセスをお伺いでき、とてもいい勉強をさせていただきました。
それでは、ここからは9月27日に開催された第3回「ともいき食堂」の様子をお届けしていきたいと思います。
多世代が集まり、みんなでお昼ごはんを囲むイベント「ともいき食堂」におじゃましました!
「ともいき食堂」とは、“みんなで食べる・まちのごはん” をコンセプトに 古川趣蔵で月に1回開催されているイベントのこと。
商店街周辺に暮らす幅広い世代の方々が、楽しく一緒にご飯を食べながら「地域のぬくもりや食べ物への感謝を共に感じ、より健康な心と体で生きる豊かな暮らし」をつくっていくこと目的としています。
ともいき食堂は2部構成となっており、この日はカフェ「102 OLD RIVER」の反町さんから “おいしいコーヒーのいれ方” を学びました。
「あれ、どうやったかな?」「フィルターの端は逆向きに折るんやで!」とわいわい交流しながらコーヒーをいれていきます。講座が終わると、12時からはお待ちかねのお昼ごはん。テーブルにはたくさんの品物が並んでいきます。
本日のお品書きは、
- 祇園ボロニヤの「元祖デニッシュ食パン」
- 102 OLD RIVERの「オリジナルブレンドコーヒー」
- 京ごはん にしむらの「スープ」
- 本かしわ 鳥寿の「マリーネ」
- 古川町万両の「自家製コロッケ」
- 阪本商店の「シーザーサラダドレッシング」
これらは、古川町商店街を中心に、周辺のお店が協力して提供してくれているそうです。
「デニッシュは少し焼いた方がおいしいで!」「まだまだあるからおかわりしてや!」と、みんなで交流しながら食べるお昼ごはん。はじめて訪れたわたしにとっても、居心地が良く楽しい時間を過ごすことができました。
食後には、反町さんによるミニコンサートが! ギターの音色とすてきな歌声にとても癒されました。
その後、商店街の方々にお話を伺っていると、「こうやって関わってくれる世代が増えて、商店街が若返った! わたし達も世代交代していかないとね、と思っているんです。」という声や、「今ある風情を残しつつ、これから “どういうまちにしていくか” を考えていきたいです。」という力強い言葉を耳にしました。
なかでも、阪本さんの「まちも人間も一緒。肉体と心どちらにも魂があり、どちらにも血がかよってはじめて、まちが “生きている” と言えるんです。」という言葉が印象的でした。
■今後のイベント情報
白川まちづくり会社では様々なイベントを企画されています。詳細につきましては、「古川趣蔵」のFacebookページで発信されていますので ぜひチェックしてみてください。
・11月23日(木・祝)
「白川シャベリバ」‥白川エリアのこれからについて、お昼ごはんを食べながらざっくばらんに会話するワークショップ。日本一詳細なエリア地図を作成予定。
・12月16日(土)
「着物 de 撮影会(仮)」‥着物レンタルとプロカメラマンによる記念撮影 (詳細は後日Facebookにアップされる予定です)
・12月16日(土),17日(日)
「クリスマスフェスティバル」‥美味しいもの盛りだくさん! 商店街全体がクリスマス仕様に♪