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【第11号】イベントレポート「地域の魅力を発掘し、発信する」|ゲスト:山本あつしさん
2017/02/10

商店街HACKプロジェクトでは、商店街やまちに興味がある方を対象に「情報発信」「事業承継」「新規出店」「組織構築」などのテーマで年4回のイベントを企画しています。

第1回目は、2016年11月22日に京都リサーチパーク町家スタジオで開催。「情報発信」をテーマに、奈良よりクリエイティブ・イントロデューサーの山本あつしさんを招き、お話を伺いました。

atsushi yamamoto

山本あつしさん / クリエイティブ・イントロデューサー:1971年大阪生まれ、奈良在住。システムエンジニア、建築設計を経て、現在はデザイン思考によって「あらゆる物事の本質を見つけ創造的に伝える」という考えのもと、領域横断プロジェクトを数多く手掛ける一方、大阪芸術大学デザイン学科、奈良佐保短期大学生活未来科などで講師を務める。また、奈良の市街地にある下御門(しもみかど)商店街の企画・広報、同商店街内にあるダンスホールをリノベーションしたカフェ「Sankaku」のプロデュースを手掛けるなど、地域に密着した活動も行っている。

物事の本質を見つけ、最適なカタチで伝えていく。

atsushi yamamoto

クリエイティブイントロデュースは、 “人・場所・事・物などあらゆる物事に独自の視点から光をあて、それまではあまり気づかれなかった、あるいは長い間忘れ去られていた本質を見つけ、それを最適な方法でクリエイティブに紹介すること” と独自に定義づけ、これまで様々なプロジェクトを手がけてこられた山本さん。その手法は、文章を書く、写真や映像を撮る、それらを編集する、製品や空間をつくる、ツアーやイベントを企画・実施する、学びの場をつくるなど。

これまで、奈良の特産品である大和茶(やまとちゃ)のデザイン・プロデュース、生駒市民と一緒にまちのCMの制作、そしてデザインをテーマにした大学での講義や市民講座の企画などをされてきました。

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生駒市定住促進ムービー(写真提供:山本さん)

「情報発信」の方法が多様化し、かつ誰でも簡単に行える現代社会では、メディアやフリーペーパー、SNS、映像やリアルイベントなど様々な媒体で気軽に発信できるようになりました。

しかし、伝えることよりも先に “物事の本質を見つけることが大切だ” と山本さん。そう考えるようになった始まりは、ご自身の「住まい」からだったそう。

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▲自らプロデュースしたモデルハウス兼自宅で、新たなライフスタイルを紹介している山本さん。(写真提供:山本さん)

かつて、山本さんが住宅建材の販売や設計・施工の仕事をしていた2007年のこと。建物ではなく、その家でどう住まうかを提案していくことが大切だと考え、「美術館に住む」というテーマで友人アーティストの展覧会を自宅で開催。

「家」という空間から、自然にゲスト同士の会話が生まれ、新しい出会いがどんどん生まれていく。そこにおもしろさを感じた山本さん。ワークショップを行ったり、ちょっとしたカフェコーナーを設けたり。そうしていくうち、にぎわいに誘われて地域の方々が興味をもって訪れてくれるようになりました。

このことをきっかけに山本さんは、地域と関わり、繋がりを生み出すことを事業にしようと心に決めます。

山本さんが関わり始めた頃の下御門商店街は、他の商店街に比べ駅から離れているので人通りも少なく、少し寂しい印象だったとか。そこにお店を出し、関わることで見えてきた古い商店街の課題と可能性。現在25店舗あるお店を見てみると、単身の高齢者が多く、後継者不足が課題であると気づきます。商店街組合の理事長と話すうちに “いま、みんなでまちの未来をつくっていかなければ、将来はない” と感じたことから、商店街活性化プロジェクトが始まります。

まちのブランドをみんなでつくる。

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朝の掃除の様子(写真提供:山本さん)

そこでまず始めたのが、「坂のある商店街」というブランドやイメージの発信でした。

下御門商店街では1998年にアーケードを改装したことをきっかけに、月に一度、最終土曜日の朝7時から商店街の掃除をしています。個性的な商店主たちもこの時ばかりはみんな自然とひとつになるのだそう。そこに魅力を感じた山本さんは、 “人と人とをつなぐ坂道” をキーワードにした企画を組合員の方々と一緒に考えていきます。例えば、2012年から始まった商店街の坂道を使ったダイナミックな「流しそうめん」のイベント。

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流しそうめんの様子(写真提供:山本さん)

当日の朝早くから、店主の方々や地域のボランティアの皆さんが力を合わせてつくりあげる全長80メートルの竹の流し台には、美味しい奈良県産のそうめんが流れていきます。夏休み最初の週末ということもあって、近隣に住む家族連れや外国人観光客も訪れます。今では2,000人近くが参加する奈良の新しい風物詩になりました。狭い通りに人が溢れるため、直接商売に結びつかないお店もあるので決していいことばかりではありませんが、この日は組合員が一丸となって下御門商店街をPRする、そんな思いから毎年続けられています。

また2013年には、市販のガイドブックには載らない、個性豊かな店主の声や商店街に伝わるちょっと昔の話などをまとめたフリーペーパー「しもみかど帖(※1)」を発行。

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(写真提供:山本さん)

2014年には、奈良芸術短期大学の学生や公益社団法人 日本広告写真家協会の写真家の皆さんと一緒に製作した、各店舗のPRパネル展を開催するなど、様々な情報発信を試みました。こうした取り組みが小さな商店街の認知度を上げることに貢献し、ここ数年で4店舗の新しい店がオープンしたそうです。

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(写真提供:山本さん)

※1) 「my home town わたしのマチオモイ帖」出展作品…マチオモイ帖とは、日本全国のデザイナー、写真家、イラストレーター、映像作家、コピーライター、編集者などのクリエイターが、自分にとって大切な町、ふるさとの町、学生時代を過ごした町や、今暮らす町など、日本各地に眠る無数の価値を、それぞれの思いと共に小冊子や映像にして紹介する活動です。(HPより)

視点を変えて、まちの価値を見直す。

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▲“ショウテンガイ・エイト” というスタンプラリーと歴史、そして演劇を組み合わせたイベント。(写真提供:山本さん)

山本さんは下御門商店街に携わるようになったことをきっかけに、このうち8つの商店街が協力して行う活性化事業にも関わるようになります。

隣接する商店街どうしが連携していくことで、奈良の新たな魅力の発掘・発信ができるのではないか、また各商店街の若手後継者のつながりをつくることで生み出せる何かがあるのではないか、と新たな企画を考えることに。

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▲お芝居の脚本は、奈良を拠点に活動する演出家・新居達也さんによるオリジナル作品。(写真提供:山本さん)

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▲8商店街それぞれのお店が自由に参加できる連動企画 “8(エイト)セール”(写真提供:山本さん)

一部の有志だけでなくそれぞれの店舗が楽しみながら自主的に参加できる仕組みをつくることで、商店街全体で盛り上げていこうという空気が生まれたのだそう。

「あきらめる」というデザイン。

closing

山本さんが商店街と関わるようになって6年。

その中で発見したのは、 “あきらめる” というデザインでした。これは商店街だけでなく、今後の日本の社会全体で考えていかなければならないこと。

「あきらめる」という言葉にマイナスなイメージを持つ人は、少なからずいるでしょう。しかし、あきらめるの語源は “つまびらかにする、明らかにする、物事の道理や本質を明らかにしていく” ことだと聞けば、そのイメージは変わるかもしれません。

下御門商店街はどちらかというと小さくて地味な商店街かもしれません。だからこそ、他の大きな商店街や大型ショッピングモールのような派手なことは思い切って諦め、自分達が “今もっているもの” をもう一度棚卸しすることで、そこにある価値を見つけて伝えていくことができるようになりました。

今あるものをマイナスに思うのではなく、明らかにした上でしっかりと受け止め、“どう活かしていくのか” がこれからの商店街や私たちに必要なこと。

山本さんは、最後にそう締めくくられました。

参加者からのご質問やご感想

Q:最初、どのように取り組みを始めたのですか? その時意識したことはありますか?

山本:理事長をはじめ組合員の方々の想いや、 “やってみたい” ことを引き出すところから始めました。実は「流しそうめん」もそうだったんです。

それから大切なのは、「形にする」ということ。言葉にする、絵にする、文章にする。イメージしにくいものを、そうやって一つ一つ形にしてをお見せすることで伝わっていくことがわかりました。

Q:よく補助金で行うイベントは継続性がないと言われますが、イベントをすることによって何か継続的な効果や個店の利益は生まれましたか?

山本:まずは新店舗ができたこと。ここ数年で4店舗の新しい店ができました。中には、住居もお店と共に構えられた方もいらっしゃいます。これまではなかなか雑誌などでも取り上げられなかったのが、イベントをすることで「坂のある商店街」というイメージが浸透した結果だと考えています。

また、イベントの準備のための会議などで、組合員が集まる機会が増えました。意見を出し合うことで相互理解が深まったと思いますし、それは今後の組合運営に大きな影響を及ぼすと思います。高齢の店主もおられるので、顔を合わせる機会を増やすこと自体、お互いの見守りに繋がるという効果もあります。

今この商店街が取り組むべき課題は、売上げアップよりも「後継者をどうするか」ということだと考えています。手の打てるうちに、やるべきことをやる必要があるのではないかと思います。

Q:どのようにすれば企画のアイデアが出て来きますか?

山本:ケースバイケースですが、「1人で考えない」「なるべく立場の違う人と話す」ということを心がけています。意見の違いを楽しむことが大切です。

また、よく「巻き込んでいく」と言いますが、巻き込まずに巻き込まれていくのが自分のスタイル。自分も楽しく、みんなも楽しいと思えることに巻き込まれたい、常々そう思っています。そして気負わず、無理しすぎず、 “できる限りの努力、できる限りの協力” を合言葉にやっています。

その他にも会場からは、「若者が見ても興味が湧くデザインで発信されている点がいいなと思いました。」という声や、商店街の理事長を務めている方からは、「前例にあまり捉われすぎず、思った通りにやってみたらいいのかもしれないと思いました。元気をもらいました。」という感想がありました。

-山本さん、本日はどうもありがとうございました。

「ここにあるものは何か」ということを商店街やまちの人たちと一緒に認識しながら、映像や冊子、イベントなどの様々な媒体で発信していくことで、世代を越えた幅広い層の方々に「大切にしたいこと」が届いていくのだと改めて感じました。今回の山本さんのお話は、決して商店街に限ったことではないと思っています。「自分にあるもの」や「得意なこと」を棚卸して、商店街やまちと関わりながらそれらをどう活かすのか、ということを私自身も改めて考える機会となりました。

イベント概要はFacebookページにて。

ライター
Anna Namikawa
地域
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